天文学研究について

研究テーマ Planet-C金星探査計画用赤外線カメラの開発
共同研究者 中村 正人(宇宙科学研究所)
上野 宗孝(東京大学)
笠羽 康正(宇宙科学研究所)
イシツカ ホセ(東京大学)
はしもと じょーじ(東京大学)
今村 剛(宇宙科学研究所)
中村 良介(宇宙開発事業団)
岩上 直幹(東京大学)

金星を観測するPlanet-C探査機の想像図
(「ニュートン」2001年12月号から)
この研究テーマは、日本が2008年打上げ予定で推進している、 Planet-C金星探査機搭載用の 赤外線カメラを開発するものです。もちろん、上の表にリストされている 主メンバーだけではなく、多くの人々の協力のもと、精力的に進められて いる開発計画です。 Planet-C金星探査計画 全体は、宇宙科学研究所の小山孝一郎教授によってまとめられています。

ガリレオ探査機の撮影した金星夜面画像
NIMS 1.73μm画像 NIMS 2.29μm画像
右図は、ガリレオ探査機が撮った「金星の夜側の面」です (NIMSと呼ばれる装置を用いています)。 金星の分厚い雲の下には 高温の大気が広がり、赤外線に満ち溢れて います。その赤外線は、雲の薄いところを通して 外へ漏れ出し、このような影絵を見せてくれるわけです。 この方法を使えば、以前はなかなか知ることのできなかった「雲の下の 気流や気体の分布」を調べることができます。 我々の開発している赤外線カメラIR2は、このようなデータを長い期間、 連続的に得ることで、謎に満ちた金星気象の全貌を解明することを 目指しているのです。

IR2カメラ全体像は、左のようなものです。金星大気の熱が 発する赤外線を観測するために、カメラそのものの熱赤外線を抑えねば なりません。コンプレッサと冷凍機ヘッド がその仕事をします。
金星が太陽に近いとき、レンズが太陽光を直接受けるとゴーストが 発生し、画像の質が落ちてしまいます。レンズ フードはそれを防ぐためのもので、レンズはその奥の方に位置 しています。
フィルターで目的の赤外線を選び、 受光部に置かれたPtSi検出器で画像を 撮影します。
カメラ全体は、探査機の箱形をした本体内にすっぽり入っていて、 レンズフードの先端だけが、箱に開けられた穴から顔を出しています (隠しカメラみたいです)。このページ先頭の想像図では、探査機の 裏面(金星に向いた面)に、他の四台のカメラとともに並んでいることに なります。

観測する赤外線波長は何でも良いわけではありません。 右は、金星夜面を分光観測したもので、ヨコ軸が波長、タテ軸が光の 強さです。いくつかの波長において、雲の下からの赤外線の漏れが 顕著になっており、これらを 大気の窓領域と呼びます。 何しろ、金星大気の大部分は 温室効果ガスとして知られる二酸化炭素 ですので、このような波長を狙わなければ目的の観測はできないのです。

IR2の観測から分かることを紹介します。
IR2カメラは、上で述べた複数の大気窓を利用し、雲の動きを精密に 観測します。こうして得られるデータは、分厚い雲の 中間層から下の部分における大気の流れを 教えてくれます。Planet-Cに搭載の 他カメラが観測する上層大気に関する情報と組み合わせて、金星 大気の力学を立体的に解明してゆくわけです。
また、上昇気流・下降気流に伴って生じる 雲粒の大きさも調べる ことができます(地球でも、激しい上昇気流に伴う積乱雲〜入道雲は、 大きな雲粒からできています)。ガリレオの画像をよく見ると、波長 1.73μmと2.29μmとでは、後者において模様のコントラストが高く なっています。2.29μm画像中で明るい部分においては雲粒が小さく、 長い波長の赤外線をさえぎる能力が弱まっているとして説明ができます。 これを大気の動き情報と組み合わせ、金星の分厚い雲を作り維持して いるメカニズムに迫ることができるわけです。
IR2にはこの他にも、さまざまな観測モードがあります。あまりに 専門的になりますので、別ページにて詳しく述べようと思います。

開発の予定
現在私たちは、科学的成果を最大にするため

などを行っています。 右の画像は、装置全体の冷却度を調べたときの試験風景です。

2008年打ち上げといえば先のことのように思えますが、間違いなく動く 観測装置を作ることを考えると、なかなか大変なスケジュールです。 何しろ、うまく動かないからといって、宇宙までそれを直しには行けない のですから (その点では、最近大改修を受けたハッブル宇宙望遠鏡の方が有利かも 知れませんね)。 そうした難しさを乗り越えて、世界に誇れる日本の金星探査を実現しようと、 さまざまな研究機関に所属する多くの研究者がその知恵を出し合い、 努力しているのです。


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(順次アップデート)

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Satoh Laboratory, 2002.
Last Update: 07/14/02.